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地理情報システムの応用

 愛媛大学に2000年6月に赴任以降,微力ながらGIS演習に取り組んで来ました。ソフト・ハードともゼロからのスタートでしたが,今年で5年目となりおぼろげながらも何とか演習としての形になりつつあります。

 当教室は「地理学科」ではなく,法文学部の1小教室にすぎませんが(教官は3名),学長経費などの助けを借りて3年がかりでハードを整備してきました。学生については,文系学部ということもあってか,もとからパソコンに明るい者は皆無に等しいですが,1年がかりで取り組めば,なんとかなりました。

 この間の演習での取組は,

堤 純(2001):人文・社会系大学教育におけるパソコン版GISの活用―松山市中心商店街における土地利用調査を事例として―.愛媛の地理,第15号,pp. 26-38.

にまとめてあります。お手数ですが,適宜参照下されば幸です。ファイルをダウンロードされる場合は,お手数ですが,ご一報下さい。

 なお,下記ファイルのダウンロード・閲覧・印刷は自由に行っていただいて結構ですが,無断転載,再加工等は一切お断りいたします

2000-2003年度 愛媛大学法文学部 堤研究室におけるGISの取組
(パワーポイント 3.15MB) 
2003年度 「松山平野の生活空間を考える」(比較地域論演習報告書)
(PDF 10.6MB)

↑↑ファイルサイズに注意↑↑
 このファイルはファイルサイズが大きいため,家庭での電話回線によるダウンロードには不向きです。大学等の高速LANまたはADSL回線など,適切な環境を選択下さい。

 昨年度 平成14年度は前・後期1年をかけ,学生自身の興味関心に基づいたテーマを決めさせ,班別に下記テーマについて地図を作成して,簡単な文章をつけて報告書にまとめました(巡検報告書冊子のようなスタイル)。

  ●松山市の市街地周辺地区における土地利用変化
  ●松山市における小売店舗売上高の変化
  ●松山市中心部における高層マンションの都心回帰について
  ●松山市における住宅地景観の地域的特徴と形成過程
  ●松山市における路面電車と郊外電車の乗降客について
  ●愛媛県温泉郡重信町における花卉栽培の現状
  ●松山市中心商業地域における構造変化
  ●大街道・銀天街における土地利用調査
  ●松山市都心部における土地利用変化

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 まだ準備中のページですが、GISの教育面での利用例を,ちょっとだけお見せします。

 ここでは,平成12年度に堤担当の演習にて実施した松山市中心部の土地利用調査を事例に,ArcViewでの地図化の過程を簡単に紹介します(画像をクリックすると,拡大表示されます)(紹介内容は,堤(2001)を一部加筆修正したものです)。


地理情報システムとは?

地理情報システム(GIS)は,コンピュータに取り込んだ地図や属性データを効率的に蓄積・検索・変換して,地図出力や空間解析,さらには意思決定の支援ができるように設計されたツールである。GISは当初はGeographic(al) Information Systemの略語として用いられてきたが,近年ではこれをGeographical Information Scienceの略語としてみなされる場合も多い。汎用性の高いソフトの普及に伴い,GISを用いた分析が行いやすくなってきている(高阪・村山,2001)。
  GISの応用は,大学などの研究機関のみで進展してきたわけではない。電気やガス,通信などの企業ではいち早くGISが導入されたし,近年では行政機関において地図を扱う部局や,民間企業のエリアマーケティング部門(店舗の新規出店地点の分析や配送ルートの設定など)などにおいてGISの導入が顕著である。

 地理情報システム(以下GIS)は1980年代に欧米で発展し,そして1990年代に入り日本の地理学教室への導入が進んだ。しかし,導入初期のGISは,価格自体が高価であったことや,UNIX-OS版が主流であったために機器操作が極めて煩雑であった。そのため,誰もが気軽に主題図を作成できるという状況にはなかった(中村 1995)。しかし,GISによって統合して管理された地図データと属性データを関連させて情報表示することは,主題図(地理学,地図学)そのものであるといってもよい。したがって,あらゆる地理学的な方法論において,GISの導入の可能性があることになる。既往の研究例が示すとおり,初心者を含めた広い利用者を意識した上で,近年長足の進歩を遂げているパソコン版GISを地理教育に取り入れていくことは急務といえる。

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パソコン版GISの普及

 ほんの数年前までは,GISといえばUNIX-OS版(Arc/Info)が主流であり,これらの機器操作を行える人材は限定されていたのが現状である。また,パソコン版GISの登場後も,しばらくの期間は予算的な問題から導入台数が限定されており,地図データ入力,属性データ入力,地図表示,分析に至る一連の機器操作を多くの学生が修得するには限界があった。しかし,近年の(特にWindows98以降)パソコンの進歩は著しい。今後は行政機関をはじめ多くの民間企業でもGISが広く普及することが予想されている。代表的なパソコン版GISソフトであるArcView本体は,アカデミックディスカウントによって1ライセンス15万円である。この基本ソフトウェアのみで地図入力と表示が可能である。次章で紹介するように,公開されている地図データを利用するか,あるいは,スキャナによってパソコン上に取り込んだ画像データをもとに独自の地図データを入力して利用することもできる。もちろん,A0版のような大きな図面を直接入力できるディジタイザをパソコン版GISに接続することもできる。基本ソフトのみで一般的な地図入力と解析は可能であるが,より高度な解析を求める場合,最短経路探索などのネットワーク分析を行うためには,機能拡張オプションとしてSpatial Analystが必要となるし,航空写真のラスター画像を重ね合わせて表示するにはImage Analysisが必要となる。また,地形データなどを立体的に表示するためには,機能拡張として3D Analystが必要となる(各オプションは1ライセンスが各15万円である)。
  急速に普及しつつあるパソコン版GISにより,導入に必要となるコストが著しく低下している。高性能パソコンやディジタイザなどの高価なハードウェアが無い場合でも,通常の研究予算にて導入可能なごく一般的なパソコンが一式ありさえすればGIS教育が行えるようになってきている。GISの導入および普及を先導してきた地理学の大教室に続き,今後は,スタッフが数人の小規模な地理学教室ならびに人文・社会系学部の他分野の教室においてもGISの導入の可能性が高まることが予想される。

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公開されたデータの取得
国別・都道府県別・市町村別の白地図入手は比較的容易

例えば,パソコン版のGISソフトウェアであるArcView3.2を購入すると,バリューパックCD-ROMが附属しており,このCD-ROMの中から日本全国の市町村界の入った「.shp」形式のファイルを入手できる。このファイルを用いて分析に必要となる部分のみを切り取って別の「.shp」形式のファイルを作成すれば,市町村別に集計されたデータを属性データとして与えるだけで分析や地図表示が可能である。
  同様に,都道府県別の地図データの入手も比較的容易である。例えば,前記のバリューパックCD-ROMに含まれる標準メッシュポリゴン作成ツールには,十進緯経度によって描かれた都道府県別の地図データ(国土数値情報1次メッシュの区画を示す「.shp」形式ファイル,および,都道府県の境界を示す「.shp」形式ファイル)が含まれている。この地図データの中から,都道府県別の地図データの「.shp」形式ファイルを取り出して別名で保存すれば,手軽に都道府県別の分析に用いるデータを作成できる。しかし,この図のままでは,全国を表示した際に,形が横長に変形している印象は否めない。これを修正するためには,この図の投影法をUTM座標系に変換する。「VIEW」画面のメニューバーにある「ビュー」の「プロパティ」を開くと,地図の投影法を選択するボックスが画面上に表れる。「投影法」のボックスをクリックすると,種々の投影法が一覧表示される。これらの中からUTMを選択し,「Zone54」(基準子午線が東経141度の場合)を選択すればよい
  これらのように,都道府県単位の地図や市町村別の分析であれば,デジタル化された地図が比較的容易に入手できるため,これらを用いた統計分析は容易である。市町村の領域内を塗り分けるコロプレスマップであれば容易に作成できる。  行政や民間企業のマーケティング部門などにおいて様々な現象や諸要因を総合的に捉えるためには,地図を積極的に活用した空間分析や地域間比較などが有効な手法となろう。例えば,有珠山三宅島の噴火に際し,国土交通省国土地理院では,ホームページ上にて地図データを無償で提供している。これらには道路情報などが含まれているため,ダウンロードした地図をもとに避難経路の最短経路探索を行ったり,各種施設の立地場所の検討などの分析を即座に行うことが出来る。このような形で,インターネット上で地図データを取得し,それらの地図データを各自が加筆・修正し,再びそれらの地図データ(例えば「.shp」形式の主題図ファイル)をインターネット上で公開し,それらの情報を他者と共有する利用法などが今後は急速に進展すると思われる。

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取得したデータの加工

数値地図(標高等)や空間データ基盤(建物,道路データ等)の整備が進み,CD-ROMに収められた地図データが比較的低価格で入手できるようになった。しかし,これらを単にパソコン画面に表示するのは簡単であるが,これをそのままArcViewに取り込むことは出来ない。これらのデータをArcView上に取り込むためには,データ変換ツール(98000円)を別途購入しなければならない。
 しかしながら,分析のスケールにかなうベースマップを入手することは意外にも困難を伴うことも多い。諸現象を空間的に考察するためには,時として目的に応じた地図を作製する必要に迫られる。地理学的分析,あるいは地理教育にとって,目的に応じた適切な分析スケールの選択は不可避である。市販あるいは無償配布によって入手できる地図データには限界がある。これらのファイルが入手できない場合(ミクロな分析であれば殆どの場合),GISのソフトウェアを使用して,対象地域の地図データをデジタイザーなどを用いて入力しなければならない。
 例えば,特定の作物生産量や事業所の立地数など,絶対的な量を表記するには,都道府県などの領域内を塗りつぶしてしまうコロプレスマップでは不適切であるため,●や■などのマークの大きさを変化(可変マーカー)させて地図上に表記することになる。しかしながら,公開されたデータのままでは,可変マーカーによる作図はできない場合が多い。このような図を作成する場合,次のどちらかの方法が比較的容易であろう。第一は,新たな「.shp」形式ファイルを「ポイントフィーチャ」にて作成し,各ポイントのID番号を参照して属性データを読み込む方法。第二は,ArcViewに用意されたスクリプトを用いて,各ポリゴンの中心点のx,y座標値を計算し,これらをシェープファイルの属性データとして予め与えた上で,結合すべき属性データを読み込む方法である。もちろん,Microsoft Excel等の表計算ソフトを用いて入力したデータは,テキストファイルとしてArcViewに容易に取り込むことができる。
  愛媛県における市町村別の農家数と専業農家率のデータをもとにArcViewによって地図を作製してみた。愛媛県における市町村別の農家数と専業農家率のデータをもとにArcViewによって地図を作製してみた。図上は,ポリゴンフィーチャの地図である。デジタル化された市町村別の地図データは入手が容易なため,この種の図の作成は容易である。この図とは別に,市町村別の農家数を各市町村のポリゴンの中心点の座標値をもとに,可変マーカーによって表示したものが図中である。これらの図をオーバーレイして表示したものが図下である。各々の図の凡例やハッチの種類などについては,ArcView上の「凡例エディタ」によって変更できる。作成した図は,「エクスポート」によって,画像処理ソフトウェアであるAdobe Illustrator等の他のソフトウェアでも利用することができる。ArcView上でも「レイアウト」画面上にて図の細部の調整は可能であるが,ハッチやパターンの種類や処理速度などを考慮すると,カラーの表示のまま他ソフト用にエクスポートし,そのファイルを画像処理する方法が地図の清書には効率的と思われる。
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スキャナとマウスによる独自の地図データの入力

 前述の通り,近年では,デジタル化された地図データが急速に普及しつつあり,これらのデータを積極的に活用していく必要がある。しかし同時に,分析のスケールが供給されるデータによって左右されることがあってはならない。
  地域分析や地理教育に求められる分析のスケールは,概して都道府県別や市町村別よりもミクロである。地域に密着した調査や分析は,ミクロスケールのベースマップをもとに現地調査を重ねることの効果が大きい。
  これらミクロなデータをGISに取り込む場合,地図の入力装置が必要になる。パソコン版のGISが登場する以前では,入力装置としてはディジタイザが主流であった。これがない場合は,データ入力が煩雑となり,機器を操作できる人材が極めて限定されてしまう難点があった。パソコン版のGISの普及により,スキャナとマウスといった極めて汎用性の高い,いわば日常的な道具による地図入力が容易にできるようになった。スキャナによってベースマップを読み取り,これを「.bmp」形式などのファイルとして保存すれば,ArcView上にイメージデータとして表示することが出来る。これを下絵として画面上に表示したまま,独自の地図データを新たなテーマ上にマウスを用いて入力していくことが出来る。
  もちろん,一般に普及しているフラットヘッド式のスキャナはA4版が主流であるため,これよりも大きい地図をベースマップとして用いる場合は,少々の困難が伴う。より広域の地図をスキャナで取り込む場合は,機能を拡張するエクステンションを購入するか,あるいは,いくつかに分割して取り込んだ「.bmp」ファイルを画像処理ソフトを用いて予め統合して一つの「.bmp」ファイルを作成しておく必要がある。
  目的・必要に応じた地図を駆使した地域分析・研究を進める上で,GISの応用範囲には多くの余地が残されている。しかし,上記のような少々の困難は伴うとはいえ,日常的に使用しているスキャナやマウスなどの入力装置によって地図が取り込めることとの利点は計り知れない。「無い地図は作れば良い」という発想をもって,自由自在にデジタル化されたベースマップをパソコン上で作成できる人材を育成していくことは,大学の地理学教育において,学術的にも実用的にも大きな現代的意義があると言える。

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スキャナとマウスによる独自の地図データの入力
松山市中心商店街における土地利用の現地調査

 入力する地図データの種類には,ポイントフィーチャ(個店の売上等),ラインフィーチャ(流動量等),ポリゴンフィーチャ(土地利用図等)がある。ここでは,松山市中心部を対象に2000年10月に実施した土地利用の現地調査によって得たデータをもとに,地図(ポリゴン)データ作成の事例を紹介する。
 2001年5月現在,愛媛大学法文学部地理学教室では,GIS用のパーソナルコンピュータを1台保有し,これにA4版スキャナーとプリンタが接続されている。GISソフトはArcViewの本体と拡張オプションである3D Analystが各1ライセンスというシステム構成である。パソコンのハードウェアはOSがWindows98のごく一般的な機種である。現段階ではライセンスが1,そして,ディジタイザなどの周辺機器をもたない最小限のシステムである。この状況で,平成12年度後期の法文学部授業として,地理学専攻生11名を対象にGISの修得を目的とする演習を実施した。松山市の中心商店街(東西約1km,南北約700m)を対象に,2500分の1都市計画図をスキャナにより「.bmp」形式のファイル化したものをベースマップとして,地図入力から土地利用現地調査,地図表示,報告書作成に至る一連の作業を実施した。将来的には複数のライセンスを購入して,多くの学生に機器操作の機会を提供することを視野に入れているが,現段階では非効率的ながら各自交代で地図入力,属性データ入力,地図表示,分析に至る一連の作業を進めた。
  スキャナで取り込んだベースマップを下絵として画面上に表示した上で,ArcView上に新たなテーマを作成し,そこへ各区画(ポリゴン)を入力した(図左上)。はじめに各ブロックの外側の輪郭を「多角形ツール」で作成し,後にその内部を「ポリゴン分割ツール」にて細分する方法で区画を入力していった。この状態では各区画にID番号は付与されていない。そこで,入力の終了した区画に対して, ID番号を順次付与した(図右上)。地図入力画面である「VIEW」と属性データの画面を同時に表示しながら作業を進めた。これらの作業を通して,最終的に図下に示す地図データの入力が完了した。この範囲で,区画数は約1000である。
  次は土地利用のコード化である。土地利用の現地調査では業種についてはコード化したものではなく,「薬屋」,「うどん屋」,「携帯電話ショップ」などのようになるべく具体的に記入しておいた。調査結果をもとに,図左に示す土地利用コード表に基づき,Excelを用いて各区画のID番号を参照しながら該当する土地利用コードを入力した(図中)。データの入力後,Excelのファイルをテキスト形式で保存し,このデータをArcView上に取り込んだ。テーブルを追加し,作成したテキストデータを表示し,ID番号を参照しながら地図の属性データテーブルにデータを結合した(図右)。  その後,新たな「.shp」形式ファイルを作成し,VIEW画面上に表示した
  今回の例では,建物の1階部分の土地利用を例に,1列のみのデータを取り込んだ。もちろん,必要となる地図の枚数に相当する複数列のデータを読み込めば,多様な地図を容易に表示することができる。また,特定の土地利用コードのみを表示することも可能である。このためには,凡例エディタを用いて特定のコードのみを選択するか,あるいは,属性データテーブルへのデータ結合の段階で複数の項目(フィールド)に分けてデータを与えてもよい。いずれの方法にせよ,複数の分布図を容易に作成することができる。

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地図から見える,松山市中心商店街の特徴

 特定の土地利用の地目のみを表示することにより,非常に多くの土地が駐車場として未利用な段階に留まっていること,また,歴史ある城下町の特徴として呉服店が銀天街を中心に10店以上集積していること,そしてゲームセンターやカラオケボックス,パチンコ店などの娯楽施設が中心商店街に多く立地している様子等が視覚的に明瞭に見てとれる。また,GISでは,複数の地図を同時に表示した上で,両者の重なり合う部分のみを抜き出して新たな地図データを作成することもできる。
 愛媛県産業情報センター(1999)によれば,調査対象地区である松山市中心商店街(大街道と銀天街の各商店街)は,空店舗の割合が極めて低い。しかしながら,前述の通り,若年層を対象とした娯楽施設の増加やファーストフード店などの小売業以外の飲食・サービス業の増加は,空店舗率の低さと表裏一体の関係にある。横山(2000a)も指摘するとおり,若年層を対象としたこれらの業種の増加は,集客力という点で商店街には貢献するものの,魅力ある商店街作りという点で疑問が残る。松山市における商業集積のイメージの調査結果によれば,30歳未満の青少年層にとっては松山市の中心商店街は「買物空間」のみならず,「遊びの空間」としての認識も高まってきていると指摘されている(池田 1998,藤目 2000)。松山市の商業地域構造が,他都市の例にもれず郊外化の動向を示す中で(横山 1994),中心商店街と郊外の大型小売店(専門量販店や複合ショッピングセンター)の両者が機能を分担しながら共存している。松山市は人口47万を擁しながらも市街地面積が狭いという特有の状況から,郊外の大型小売店が売上高・販売効率を高めつつも,依然として中心商店街が核心的な商店街としての機能を維持している(横山 2000b)。
 今回の調査の結果,さらに特筆すべき点として以下の点が挙げられる。それは,低価格の雑貨を扱う店舗や携帯電話の取次店など,従来の1店舗分のスペースをさらに細分化することによりテナントを出店している例が顕著に確認されたことである。これらの業種の店舗が,空店舗あるいは販売効率の悪い店舗の跡地に入居することにより,空店舗率を低下させていることが新たな動向として指摘できる。

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付記

 平成12年度の作業では交代でデータ入力を進めたため,授業時間内では単年次のデータ入力が限界であった。この状況を改善するためには,できるだけ多くのライセンスを確保して,各学生の機器操作の機会を増加させる必要がある。そのためには,研究費に限界がある以上,ArcViewのファイル形式である「.shp」形式のファイルを扱うことのできる他のGISソフトなどとの組み合わせも考慮する必要があろう。
 パソコン版GISであるArcViewの普及により得られる効果は大きいといえる。しかし,ArcViewでは,可変マーカーによる地図表記や,面積計算,ポリゴンの周長計算,各区画へのID番号の付与(ARC/INFOの「labelids」コマンド),ラベル点の付与等々,ArcViewの普及前に主として利用されてきたUNIX-OS版のARC/INFOに比べて,分析や地図表記の方法によっては不可能ではないが多くの困難を伴う例もある。これらの点の今後の改善が待たれる。
  ポリゴンの中心点のx,y座標を計算したり,ポリゴンの面積計算,ラインの長さを計算するスクリプト等は,ArcViewに予め用意されている。これらのサンプルスクリプトは,ヘルプを参照しながら利用することができる。詳しくは,ArcViewの代理店であるPASCOのホームページを参照。
  総店舗数に占める空き店舗の割合が20〜30%を示す商店街も珍しくない状況であるが,松山市の中心商店街(大街道,銀天街,まつちかタウン)においては空店舗が極めて少ない(大街道1,銀天街3,まつちかタウン0)。なお,松山市の中央商店街に関する各種情報は,http://town.ehime-iinet.or.jp/ に詳しい。また,愛媛県内各市町村における商店街の実態調査に関しては,http://www2.ehime-iinet.or.jp/mall/ にも詳細な情報が公開されている。

文献

池田純子 1999.松山市における商業集積の変遷と消費者イメージ.愛媛大学法文学部卒業論文.
愛媛県産業情報センター 1999.『商店街実態調査(平成10年度版)』
高阪宏行・村山祐司編 2001.『GIS−地理学への貢献』古今書院.
中村和郎・寄藤 昂・村山祐司編 1998.『地理情報システムを学ぶ』古今書院.
中村康子 1995.地理情報システム(GIS)の特徴とその活用−主題図作成メニューの紹介を通じて−.北海道地理69:21-38.
藤目節夫 2000.松山市の商業集積のイメージ.愛媛大学法文学部論集人文学科編8:19-36.
横山昭市 1994.愛媛県の商店街における商業集積.愛媛の地理12:1-9.
横山昭市 2000a.商店街の立地環境と活性化への課題−立地環境特性調査から−.統計(日本統計協会)51(12):77-82.
横山昭市 2000b.松山市における商店街の変容−1988〜1997年−.人文学論叢(愛媛大学人文学会)2:1-13.
村山祐司・横山 智 2000.大学におけるGIS教育−地理学専攻生を対象とする実習−. 人文地理学研究XXIV:77-97.
村山祐司・森本健弘・田中耕市.地理学専攻学生を対象としたGIS教育−土地利用分析を題材に−.人文地理学研究XXIV:77-100.

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