水文科学分野/筑波大学 生命環境学群地球学類&大学院生命環境科学研究科
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水文科学とは?



図1 地球上の水量


図2 水の循環(Source: USGS)

地球上の水の量

“水惑星”と呼ばれる地球にはおよそ140京トンにも及ぶ膨大な量の水が存在します. しかし,そのほとんどは海水や海底下の地下水といった塩水であり,人間社会や陸域生態系にとって利用可能な淡水はわずかに2.5%でしかありません. しかも,淡水の大部分は極域の氷床・氷山あるいは地下水として存在しており,比較的利用しやすい河川・湖沼などの地表水資源は全淡水の0.3%にしか過ぎません(図1). 20世紀末の水消費レベル(3.76兆トン/年)で単純計算すれば,この資源はおよそ26年で枯渇することになってしまいます. それでは,このまま水を使い続けてゆくと,本当に26年で地表水資源はなくなってしまうのでしょうか? いえいえ,それほど急にはなくなりません.なぜなら,水は循環しているからです.


水の循環

大気中の水蒸気が雨や雪として陸域に降ると,その大部分は一度地中に浸み込みます. そして,土壌面からの蒸発や植物による蒸散活動で消費された残りの水が地下水となり,やがて地表に湧き出し,河川となって海へと流れ去ってゆきます. 海に辿り着いた水はそこで蒸発し,陸域での蒸発・蒸散によってもたらされた水蒸気と混ざり合って,再び地表に降ってきます(図2). 人間は飲料水や農業用水・工業用水として陸域の地表水・地下水を利用しますが,使用後の水も最終的には海に辿り着いてそこで蒸発するか,その途中の陸地のどこかで蒸発することにより,自然界の水循環の環(わ)に戻ってゆきます. したがって,石油や石炭などの再生不能資源とは異なり,幾ら水を使っても地球上の水が減るわけではないのです.



水に関わる問題

しかしながら,水は一度使うと,汚れたり,温度が変わったりして,利用価値が低下します. そのような水は使いにくいというだけでなく,人間以外の生物圏にまで悪影響を及ぼすことがあります(例えば,富栄養化や各種の水質汚染). 蒸発-降水というプロセスは蒸留水の作成原理と同じですので,水は自然界を循環することによって常に再生されているわけですが,利用速度が再生速度を上回れば環境は悪化します. また,大規模な灌漑は蒸発・蒸散の速度を高めますが,地域的な降水量がそれによって増えるとは限らないため,その地域の淡水資源の量は確実に減少します. 有名なアラル海縮小の悲劇はこうして起こりました.じつは,よく似た出来事が世界各地で今なお発生しているのです. 特に,大陸諸国で主要な水源となっている深部帯水層の地下水は,循環しているとはいえその速度がとても遅いので,石油や石炭同様,完全に枯渇してしまう危険が生じています. アジアの大都市が立地する脆弱な沖積平野では,地下水の過剰揚水に伴う地盤沈下の被害も深刻です.


水文科学の役割

水資源・水環境に関連した諸問題を回避するためには,水循環の速度や質的変化に関する深く正しい理解が必要です. “水文科学”とは,そのような知識を体系的かつ科学的に学び,また未知の現象を解き明かしてゆく学問です. 水道事業の民営化が世界中で進行し,多国籍企業による水の私物化が取り沙汰される今日においては,研究者だけでなく,行政や民間企業さらには一般の市民までもがそのような知識を共有する必要があります. にもかかわらず,水循環に関する正確な知識が普及しているとは言い切れないのが現状ですし,まだまだ分かっていないこともたくさんあります. アマチュア天文学者は世に多くいても,アマチュア水文学者というのはあまり聞きませんね? でも,これからの時代はもっとたくさんの人々に水循環への関心を持ってもらわなければ困ります. 筑波大学水文科学分野は,そうした人々を育成するための拠点であり続けます.



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