年の瀬の風景--お会計108円なり!

山 下 清 海

 年の瀬も押し迫った12月30日。

 「あいにく満席で」と,心のこもらないマニュアル的な言い方の若い従業員の対応に,「最近の若い者は--」と心の中で叫びながら,居酒屋チェーンを出た。
 近くにあった回転寿司店に入った。

 タブレットでの注文にやっと慣れてきたところで,60歳前後と思われる女性が一人,私の近くのカウンター席に座った。

 座ったと同時に,彼女はテーブルの粉茶を手慣れた様子で湯呑に入れ,お湯のボタンを押したと思うと,振り向いて,後にあったセルフの水のボタンを押し,再び振り返ってコップの水を湯呑のお茶に注いだ。
 あまりの早業に,「この人は・・・・」と横目に気にしながら,私は,しめ鯖の注文ボタンをタッチした。

 彼女は,これまた手慣れた様子で,タッチパネルで何かを注文をした。
 運ばれて来たのは,巻物であった。
 その一皿を食べ終わって,次の注文をする前に,彼女は新しい湯呑にガリを山盛りに入れてお湯を注いだ。
 そして,お茶の粉を入れずに,箸でかき回した。
 特性の生姜スープだ,と私は気づいた。
 その瞬間,彼女と目が合った。

 その後,彼女は,新たに何も注文せずに,トイレに行ったようだ。

 戻ってくるとパネルの精算ボタンをタッチせずに,「おあいそう!」と大きな声で叫んでレジに向かった。
 後ろの方で,従業員の声が聞こえた。
 「またのご来店をお待ちしております!」,マニュアル通りに。

 テーブルの前のメニューを見た ----鉄火巻,100円(税込108円)


(2014年12月30日)