は じ め に

 最近の若者は保守的になってきた,と感じることがよくある。私が大学でエスニック社会について講義をし,最後に感想を書かせると,「○○人は嫌いです」「私は日本が大好きなので,はっきり言って,日本にいる外国人は好きではないです」というように答える学生が少なくない。一部の外国人の好ましくない行動・態度を見て,また外国人が犯した犯罪の報道に接し,「外国人は・・・・」,「○○人は・・・・」と決めつけてしまいそうになる。しかし,実際には○○人といっても,もちろんよい人ばかりではなく,悪い人もいる。それは日本人でも同様である。

 外国人,異民族などを理解するのは容易ではない。もっともよい方法は,自分自身が海外に出て,「外国人」になってみることである。そうすると,外国人,異民族に対する接し方・考え方も変わってくるはずである。なぜなら,相手の立場になって考えることができるようになるからである。ひとりでも外国の友人ができれば,「○○人は嫌いです」という言い方はしなくなるに違いない。

(中 略)

 最近は,日本国内においても,中国人,コリアン(韓国・朝鮮人),日系ブラジル人をはじめ,海外のさまざまな地域にルーツをもつ人たちが増えた。とはいえ,日本にいては,海外において急速に進む多民族化の実情はなかなか知ることはできない。そこで本書は,グローバルなスケールで人びとが国境を越えて移動し,多様性が進む今日の世界のエスニック社会を理解するために,フィールドワークで得られた生(なま)のデータに基づいて描き出すことを試みたものである。

 本書の執筆者8名は,留学や在外研究などの豊富な研究経験をもっており,世界および日本各地の現場(フィールド)を歩き,現場からの発想を重視しながら,エスニック社会の理論的・実証的な研究に取り組んできた。私たちは共同の研究会を重ねるなかで,研究の成果をわかりやすいかたちで,社会に還元したいと考えて本書を出版することにした。このため,本書には図(特に地図)や写真を多く挿入し,ビジュアルな構成をこころがけた。また,各所に執筆者の体験に基づいた興味深いトピックを取り上げたコラムを設けた。巻末には,読者の参考になりそうな本のリストを掲げた。

(後 略)

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