エスニック・ワールド
−世界と日本のエスニック社会−
山 下 清 海 編


明石書店 2008年4月20日刊 2,200円+税
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【本書「はじめに」(山下清海)より抜粋】


 本書は、世界および日本のエスニック社会の歴史、現状、課題などが、この本1冊でわかるというような本を目指して、私が企画したものである。そのために、大勢の人々に助けていただいた。本書の執筆者は総勢一八名に及ぶ。日本と世界の各地のエスニック社会において、長年、フィールドワークに取り組んで来られた方々に執筆していただいた。
 今日、さまざまな民族が国境を越えて世界中に広がり,各地でこれまでみられなかった多様なエスニック社会がけいせいされている。本書は、このような状況をグローバルな視点から描き出そうとしたもので、本書のタイトルを『エスニック・ワールド−世界と日本のエスニック社会』と名付けた。
 では、本書の構成について紹介しよう。本書は大きく三つの章からなる。第一章は、エスニック集団、エスニシティ、住み分け(セグリゲーション)、エスニックタウン、エスニック・ビジネスなどの基本的概念を解説するとともに、エスニック社会の見方、研究の方法などを理解するのに役に立つ内容になっている。
 第二章では、世界のエスニック社会に関して、国別に具体な姿を描き出すことを目指したものである。まず、海外における日系人、華人、インド人について考察した後に、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニアなど世界各地のエスニック社会の特色を論じている。
 最後の第三章は、日本のエスニック社会を描いたものである。日本におけるアイヌ、コリアン、華人、ブラジル人、インド人の社会について、多くの日本人はあまり理解してないのではなかろうか。「そうだったのか、知らなかった」という読者の声が聞こえて来るような気がする。
 本書の最後には、エスニック社会についてもっと知りたいという読者のために、参考になりそうな文献案内を掲載した。
 本書の執筆に際しては、エスニック社会の伝統的な側面だけでなく,できるだけ新しい面,変化しつつある面も取り上げ、平易に解説したつもりである。読者の興味をさらに深めるために、合計二〇の【コラム】を各所に挿入した。また、写真や図表なども多く挿入し,できるだけビジュアルな構成になるよう努めた。
 本書が、真の国際理解や異文化理解に役立つ書となれば幸いである。



はじめに (山下清海) 

第1章 エスニック社会学の基礎 

 1.エスニック集団とエスニシティ(杉浦 直)
 2.エスニック集団の適応戦略(矢ケア典隆)
 3.エスニック集団の住み分けとエスニックタウン(山下清海)
 4.エスニック・ビジネス(片岡博美)
 5.エスニック地理学の研究史(千葉立也)

第2章 世界のエスニック社会 

 1.海外の移民社会
 (1)海外の日系人社会(飯田耕二郎)
     【コラム1】ハワイの日系人
 (2)海外の華人社会(山下清海)
     【コラム2】チャイナタウンの形成
 (3)海外のインド人社会(南埜 猛)
     【コラム3】インド人IT技術者と学校教育

2.南北アメリカのエスニック社会
 (1)アメリカ合衆国のエスニック社会(矢ケア典隆)
     【コラム4】多民族社会ロサンゼルス
 (2)カナダのエスニック社会(大石太郎)
     【コラム5】連邦残留か分離・独立か,揺れるケベック
 (3)ブラジルのエスニック社会(仁平尊明)
     【コラム6】ブラジルの日系人

3.ヨーロッパのエスニック社会
 (1)イギリスのエスニック社会(杉浦 直)
     【コラム7】インド系移民の街:サウソール 
 (2)ドイツのエスニック社会(加賀美雅弘) 
     【コラム8】ジプシーと呼ばれたロマ

 (3)フランスのエスニック社会(手塚 章)
     【コラム9】フランス型統合モデルの行方
 (4)スペインのエスニック社会(石井久生)
     【コラム10】バスク問題とゲルニカ
 (5)オランダのエスニック社会(大島規江)
     【コラム11】ベルギーの言語対立

 4.アジア・オセアニアのエスニック社会
 (1)中国のエスニック社会(杜 国慶)
     【コラム12】ナシ族の王都:麗江古城
 (2)シンガポールのエスニック社会(山下清海)
     【コラム13】マレーシアのブミプトラ政策
 (3)タイ・ラオスのエスニック社会(横山 智)
     【コラム14】エスニック・ツーリズム
 (4)オーストラリアのエスニック社会(吉田道代)
     【コラム15】「盗まれた世代」をめぐる議論

第3章 日本のエスニック社会 

 1. アイヌ社会(千葉立也)
     【コラム16】先住民族とは
 2. 日本のコリアン社会(福本 拓・千葉立也)
     【コラム17】日本最大のコリアン集住地区・猪飼野(福本 拓)
 3.日本の華人社会(山下清海)
     【コラム18】池袋チャイナタウン
 4.日本のブラジル人社会(片岡博美)
     【コラム19】構築される/溶解する「ブラジル」
     〜エスニック・ビジネスの多様化〜
 5.日本のインド人社会(澤 宗則)
     【コラム20】東京のインド人街:江戸川区西葛西

おわりに(山下清海) 

エスニック社会を知るための文献案内 (山下清海)