平成15年度 水文学野外実験B (筑波大学自然学類) −−−菅平巡検2003−−−
調査結果
測定データ
9/25と9/26の水質比較


 9/25は雨天であったので、25日と26日で水質が変化している可能性があると思われたが、実際には大きな差異はなかった。特に硝酸イオン濃度は、高濃度を示す一部の地点を除き、ほとんど変化がなかった。一方、水温は26日のほうが高めの値を示している地点が多い。以下では、水温を除き26日のデータを用いる。
硝酸イオン濃度の空間分布 電気伝導度の空間分布

 菅平川本流や上流部の支流で極めて高い濃度が検出され、硝酸性窒素濃度に換算して環境基準値(10 mg/l)を上回るものが6地点に及んでいる。これらは周囲の畑地に散布された窒素肥料が河川に流出した結果と考えられる。本流では下流に向かうほど濃度が低下しており、低濃度の支流による希釈や湿地での脱窒の影響が示唆される。

 空間分布の傾向は硝酸イオン濃度とほぼ同様で、両者の間の相関係数は0.93と極めて高い。硝酸イオン濃度による電気伝導度の線形回帰式は EC = 2.36NO3+83.0 であるので、窒素肥料の混入を受ける以前の本地域の平均的な電気伝導度の値は80μS/cm程度と推測される。
pHの空間分布 日最低水温の空間分布

 硝酸イオン濃度が高い地点でpHが低い傾向が認められるが、電気伝導度ほど相関は高くない。水流次数の高い支流ではpHが若干高く、表層地質(玄武岩など)の影響が考えられる。

 左岸側と比較して右岸側では最低水温の低い支流が相対的に多く、流域の平均標高の違いを反映している可能性がある。しかしながら、コンクリート化された水深の浅い支流では最低水温が高く、排水路整備による大気との熱交換特性の変化が影響を及ぼしている。
流量の空間分布 窒素負荷量の空間分布

 各支流の流量は明らかに水流次数が大きいほど多い。また当然のことながら、同じ次数でも流域面積の大きい支流ほど流量も多くなっている。M5地点における本流の流量は446 l/sであり、日量に換算すると38,500 tになる。

 濃度分布とは異なり、窒素負荷量では下流部左岸側の支流の寄与が大きいことが分かる。特に測定地点の上流に畑地が分布している支流で多いが、住宅地の分布とは関連性が見られない。M1地点からM5地点にかけての本流の窒素負荷増加量は約260 kg/dayであるのに対し、この間に合流する支流の総窒素負荷量は180 kg/day程度でしかない。すなわち、残りの80 kg/dayの負荷は、本流および湿地周辺の畑地からの地下水流出や暗渠排水に因っている。


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