地球温暖化予測・天気予報(ダウンスケーリング,地域気候予測)

ダウンスケーリング(地域気候予測)

 地球温暖化によって、北極海の海氷が減る、海面が上昇するなどの地球全体規模の影響が出始めていることは、みなさんもよく聞くところだと思います。これら地球全体規模の影響に加えて、山火事やヒートウェーブ(極端な高温が続くこと)など、いわゆる極端現象の頻度も上がってゆくのではないかと言われています。日本では2010年夏の異常気象や、近年メディアを賑わせている「ゲリラ豪雨」などが、温暖化の影響があるのではないかと騒がれたことは記憶に新しいかもしれません。
 しかし、はたしてこのような極端現象は地球温暖化に関連しているのでしょうか?
 極端な高温や降雨などは、スケールが小さいため現行の気候モデルではなかなか再現することはできません。そこで日下研究室では、ダウンスケールという手法を用いて地域気候への影響を評価しています。
 ダウンスケール手法は大きく力学と統計ダウンスケールの2種類に分けられ、日下研究室では力学ダウンスケールを行なっています。気候モデルから得られた大規模場の気候変動および変化を高解像度の領域気候モデルに与えて走らせるというのが、力学ダウンスケールの大まかな流れです。力学ダウンスケールはまだ歴史が浅く、様々な不確実性が次々と発見されている状態です。しかし、上手に利用すれば、温暖化によるリスクの評価、更には影響の低減などの助けになると期待されています。
 日下研究室では、力学ダウンスケールを通じて様々なスケールの現象を研究し、ダウンスケール手法のさらなる改良に取り組んでいます。

(文責:鈴木)


力学的ダウンスケールのイメージ図

全球モデルでは125~250kmという非常に粗い格子を用いて予測が行われるため、関東平野は2~3個の格子だけで表現されています。高解像度領域モデルを用いてダウンスケールすることにより、地域詳細な予測データを得る事ができます。

出典:鈴木パーカー作成
学術論文など
  • Doan, Q.V., and H. Kusaka, 2016: Numerical study on regional climate change due to the rapid urbanization of greater Ho Chi Minh City's metropolitan area over the past 20 years, International Journal of Climatology, 36(10), 3633–3650, DOI: 10.1002/joc.4582, 2016/08/01 (謝辞: CCS) .
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  • Doan, Q., H. Kusaka and Q.B. Ho, 2016: Impact of future urbanization on temperature and thermal comfort index in a developing tropical city: Ho Chi Minh City, Urban Climate, 17, 20-31, DOI: :10.1016/j.uclim.2016.04.003, 2016/06/08 (謝辞: CCS) .
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  • Kusaka, H., A. Suzuki-Parker, T. Aoyagi, S. A. Adachi, Y. Yamagata, 2016: Assessment of RCM and urban scenarios uncertainties in the climate projections for August in the 2050s in Tokyo., Climatic Change., 137 (3), DOI 10.1007/s10584-016-1693-2, 427-438, 2016/05/23(謝辞: S-5-3, RECCA, 創生, CCS) .
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  • Suzuki-Parker, A., H. Kusaka, 2015: Assessment of the impact of metropolitan-scale urban planning scenarios on the moist thermal environment under Global Warming: A study of the Tokyo metropolitan area using regional climate modeling. Advances in Meteorology, DOI:/10.1155/2015/693754, 2015/05/06(謝辞:創生, S-5-3, RECCA, CCS学祭共同利用) .
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  • 髙根雄也, 日下博幸, 原政之, 2012: IPCC SRES A2シナリオ下での三大都市圏の夏季気候の将来予測: WRF-UCMによる力学的ダウンスケーリング,日本ヒートアイランンド学会論文集, 7, 18-26. 2012/11/29(謝辞:RECCA,S-8) .
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  • Kusaka, H., Hara, M., Takane, Y., 2012: Urban climate projection by the WRF model at 3-km horizontal grid incremet: Dynamical downscaling and predicting heat stress in the 2070’s August for Tokyo, Osaka, and Nagoya metropolies. J. Meteor. Soc. Japan., 90B, 47-63. 2012/03/27(謝辞:S5) .
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  • Kusaka, H., Chen, F., Tewari, M., Dudhia, J., Gill, D. O., Duda, M. G., Wang, W., Miya, Y., 2012: Numerical Simulation of Urban Heat Island Effect by the WRF Model with 4-km Grid Increment: An Inter-Comparison Study between the Urban Canopy Model and Slab Model. J. Meteor. Soc. Japan., 90B, 33-45. 2012/03/27(謝辞:S5, T2K) .
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  • Kusaka, H., Takata, T., Takane, Y., 2010: Reproducibility of regional climate in central Japan using the 4-km resolution WRF model. SOLA, 6, 113-116. 2010/09/04 (謝辞:S5) .
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天気予報のための研究、低気圧・前線通過時の天気

 現在の天気予報は、全球モデルによる数値予報に予報官の経験的知識を加味して行われています。数値予報の精度が向上し、総観規模現象はかなり正確に予測できています。しかし、複雑な地形が影響して発生する日本特有の現象については、詳しいメカニズムが未だにわかっていないものも多く存在しています。
日下研究室では次のような研究が行われてきました。

  • 二つ玉低気圧の分類と形成時における日本列島の影響評価
  • 日本周辺域の低気圧活動のモデル再現性と将来変化
  • 寒冷前線通過時に見られる降水帯の形成メカニズムの解明
  • 日本海低気圧通過時に見られる降水帯の形成メカニズムの解明
  • 南岸低気圧通過時の関東平野の雨雪判別

 これらの研究について、AMeDASデータや天気図を利用した統計解析と、WRFによる数値シミュレーションを行いながら、天気予報の向上を目指して、さまざまな現象の疑問を解明するための基礎研究を進めてきました。
 2013年から、民間気象会社のウエザーニューズさんと共同研究を始めました。
私たちの研究室が保有するシミュレーション技術と気象予報士の方々が持っている知見を活かして、基礎から予報まで一緒に幅広く研究を行っていく予定です。

(文責:石川・平田)

日本列島を寒冷前線が通過する時に発生する降水のタイプ

 a) 広範囲に降水域が広がる事例
 b) 北陸地方のみに降水域が広がる事例
 c) 降水ジャンプが発生する事例

Kusaka and Kitahata (2009, SOLA) より →詳しくはこちら
学術論文など
  • 平田航, 日下博幸,2013: 二つ玉低気圧通過に伴う降水の気候学的研究,地理学評論, 86-4, 338-353. 2013/07/01(謝辞:S-8) .
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  • Kusaka, H., H. Kitahata, 2009: Synoptic-scale climatology of cold frontal precipitation systems during the passage over central Japan. SOLA, 5, 61-64. 2009/05/01 .
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