伊吹おろしの吹走メカニズムの解明

  • 山田 駿介, 2016: 伊吹おろしの吹走メカニズムの解明 .

本研究では主に愛知県、岐阜県に広がる濃尾平野で発生する伊吹おろしと呼ばれる強風のメカニズムの解明を行った。

はじめに、先行研究をもとに、本研究における伊吹おろしの定義を定めた。その結果、2012年から2014年の間に136事例発生しており、主に冬の終わりから春にかけて発生す ることがわかった。

次に、発生時の地上風の分布から伊吹おろしを5つのパターンに分類した。愛西、大垣、揖斐川の全てで強い北西風が吹いている場合をⅠ型、大垣のみで強い西風が吹いている場 合をⅡ型、大垣で弱い風となっている場合をⅢ型(愛西で北西の風)Ⅳ型(愛西で西北西 の風)、3地点全てで西風となっている場合をV型とした。そして、本研究では特徴的なⅠ型とⅡ型について詳しく事例解析を行った。

Ⅰ型は3年間で23事例発生しており、季節的には主に冬に発生している。Ⅰ型時の強風吹走域は濃尾平野全域である。また、輪島でのラジオゾンデ観測データから、全23事例中21事例で伊吹山地山頂(標高1000m前後)よりも高い位置に逆転層が存在していたことがわかった。さらには、数値シミュレーションの結果に基づいた後方流跡線解析の結果から、Ⅰ型発生時の濃尾平野地上付近に存在する空気は、北西方向から伊吹山地上空を通過して、その風下斜面で急降下し地上付近に到達していたことがわかった。これらの結果から、伊吹おろしⅠ型はおろし風であると考えられる。

Ⅱ型は3年間で25事例発生し、主に春に高気圧の接近、低気圧の通過後に吹く。大垣での強風が東へと広がり、濃尾平野を東西に横断するように強風域が広がることが多い。発生当日のラジオゾンデ観測データから、伊吹山地山頂より低い位置に逆転層が存在していた事例が25事例中21事例あったことがわかった。数値シミュレーションの結果からもこの逆転層の存在は、関ヶ原上空に存在していたことが示され、その高度は風下にかけて低くなっていたことがわかった。さらに、数値シミュレーションの結果から、関ヶ原地上付近でのみ風向が変化し、風速も増大していたことがわかった。さらに、後方流跡線解析の結果から、強風時には広い範囲の空気が関ヶ原に流入し、通過後濃尾平野の広い範囲に強風となって広がったことがわかった。そして、その間、主に関ヶ原内部、およびその風下で風速の増大することがわかった。以上の結果から、伊吹おろしⅠ型はgap windであると結論付けられた。

キーワード:局地風, ギャップウインド, おろし風, 逆転層, 伊吹おろし