石狩低地帯における強風の実態と発生メカニズム

  • 遠藤 周平, 2016: 石狩低地帯における強風の実態と発生メカニズム .

本研究では、石狩低地帯で発生する強風を対象に、その実態と発生メカニズムを明らかにすることを目的とした。解析に際しては、AMeDAS観測地点での風速が8 m/s以上のものを強風と定義した。また、AMeDAS札幌の風向が西から北である時を北西風型、東から南である時を南東風型の風系と定義した。はじめに、AMeDASデータの解析を行った。その結果、石狩低地帯における北西風型の強風は、西高東低タイプと低気圧タイプの2種類に分けられることがわかった。石狩低地帯における南東風型の強風も、東高西低タイプと西方低気圧タイプの、2つに分けることができた。

次に、北西風型低気圧タイプに該当する強風事例を対象に、WRFを用いて再現実験を行った。すると、流出側で強風がみられる時には、低地帯の中部より南側の上空に明瞭な逆転層が存在することがわかった。また、その逆転層の下端高度は、南下するほど降下している可能性が高いこともわかった。明瞭な逆転層が見られることから、2層流体の内部フルード数Fiを計算したところ、低地帯中部から太平洋沿岸東部に向かってFiが増大し続けていることがわかった。そのため、低地帯中部におけるFiの値は1以下である一方で、南下する過程でFiの値が1よりも大きくなっている。これは、低地帯内を通り抜ける流れが、途中で常流から射流へ変化していることを意味している。

この流れに対し、底の高さと谷幅が変化する地形上を流れる、非圧縮2層流体の理論を適用した。その結果、低地帯内に流入する流れが、低地帯内を通り抜ける際に常流から射流へ変化することで、谷幅の変化に伴って下層の厚さが徐々に薄くなり、流速が増加し続けるというメカニズムが導かれた。再現実験でも、低地帯の南側ほど逆転層下端高度が低く、地表側の層の厚さが減少している。したがって、2層流体の理論を用いて得られるメカニズムは、北西風型低気圧タイプの発生要因を説明できることが示される。この強風発生メカニズムは、従来の研究でgap windの発生メカニズムの1つとして示されている。また、谷の最狭部よりも下流側で最も風が強くなるという特徴は、gap windの先行研究とも一致している。このことから、北西風型低気圧タイプの強風は、典型的なgap windであることが考えられる。

キーワード: 石狩低地帯、逆転層、地峡風、内部フルード数、常流、射流、gap wind