屋内外の移動に伴う気温変化が人間の知的生産性に与える影響

  • 相場 祥平, 2016: 屋内外の移動に伴う気温変化が人間の知的生産性に与える影響 .

知的生産性は、作業効率で評価される。先行研究は、温熱環境及び睡眠時間と知的生産性の関係について温熱環境及び睡眠時間が人間の心理的・生理的過程に影響を与え、それが知的生産性に影響を与えると報告している。温熱環境と知的生産性に関する研究のほとんどは、気温と知的生産性の関係を作業空間のみの気温で評価しており、作業空間入室時に作業者が経験する気温変化を考慮していない。本研究は、屋内外の移動による気温変化と睡眠時間や疲労感等の生理・心理状態が知的生産性に与える影響を明らかにすることを目的とし、被験者実験を実施した。

本研究では、筑波大学・立正大学・東邦大学において、知的生産性の測定・屋内外気象観測・生理測定・暑熱環境及び疲労感に関する心理アンケートを行う被験者実験を実施した。知的生産性の測定には、2桁+ 2桁の加算テストを用いた。被験者は、空調の効いた屋内にいるAグループと一時的に屋外で安静座位をするBグループ、一時的に屋外で歩行をするCグループの3つに分けた。

屋内外気温差の大きい実験と小さい実験に分け、解析したところ、屋内外気温差の大きい実験のCグループの正答率が有意水準5%で低下していた。屋内外気温差の大きい実験のCグループを睡眠時間が長かった群と短かった群に分けて正答率が低下する要因を詳しく調査する解析をした。睡眠時間が短い人の正答率が有意水準5%で低下しており、同様の結果は他グループでは見られなかった。以上のことから、屋内外気温差の大きい日に睡眠不足の人が屋外歩行すると知的生産性が低下することが分かった。さらに、睡眠時間と知的生産性の関係を検討すると、睡眠時間が短く、屋内外気温差が大きいほど知的生産性は低下する傾向を示し、睡眠時間が長いほうが低下した知的生産性の回復が早い傾向を示した。

以上から、知的生産性は睡眠不足と屋内外気温差が大きいことの2つの条件が同時に満たされることで低下することが分かった。知的生産性の低下を防ぐためには、これら2つの条件を同時に満たさないことが重要であり、2つの条件のうち、睡眠不足については比較的簡単に改善できるため、睡眠時間の確保が知的生産性低下の緩和策として期待できる。

キーワード :知的生産性、睡眠時間、屋内外気温差、被験者実験、加算テスト