熱中症発生に影響を及ぼす気象要素の地域特性と将来予測

  • 清水 麻未, 2016: 熱中症発生に影響を及ぼす気象要素の地域特性と将来予測 .

本研究では、熱中症発生数の最も多い65歳以上の高齢者に着目して、地域ごとに気象要素と熱中症搬送者数の関係を調べ、熱中症発生の地域性、季節性を明らかにする。また、その特徴を元に熱中症患者搬送者数を予測する、実用的な予測式を作成することを目的とする。 まず熱中症発生数データと気象要素データを用いて都道府県ごとに相関解析を行い、熱中症患者搬送者数に最も影響を及ぼす気象要素を選択した。その結果、全国的に日平均気温と日中平均WBGTの相関が高かった。この2種類を比較すると、全国的には日平均気温の方が相関が高かったが、九州地方を周辺に日中平均WBGTの方が高いという地域性が見られた。 続いて、都道府県ごとに熱中症搬送者数を求める予測式を開発するため、まずは神奈川県をモデルケースに一般化線形モデルを用いたポアソン回帰を行った。その結果、神奈川県では初夏で熱中症が発生しやすく、晩夏で発生しにくいという季節性が見られ、夏季期間を3分割することで予測式の精度は向上した。さらに、同様の手法を用いて他の都道府県についても解析を行った結果、沖縄県を除く全ての都道府県において、神奈川県の結果と同様に予測式の精度は向上したため、これを都道府県ごとの最良予測式とした。 また、日平均気温もしくは日中平均WBGT 以外の気象要素の影響を調べるため、都道府県ごとに他の気象要素を第二説明変数として追加して多項ポアソン回帰を行った。追加した説明変数のうち、比較的多くの地点で予測値と実測値の相関係数が増加した気象要素は黒球温度と日射量であった。特に関西以西や東北地方・北陸地方などで顕著で、他の地域に比べて日射の影響が効いていることが示唆された。 最後に、より扱いやすい予測式を目指すため、熱中症発生に対して似た特徴をもつ都道府県をいくつかのグループに分けた上で、より扱いやすい説明変数を用いた予測式を作成した。その結果、都道府県は地理的な位置と都市の発展度によって6つのグループに分類することができた。グループ間で比較すると、日平均気温が低いグループで熱中症が発生しやすく、都市部で熱中症が発生しにくいことがわかった。