ツーリズムに対する温暖化影響評価

  • 三浦 喜華, 2015: ツーリズムに対する温暖化影響評価 .

要旨

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると「気候システムの温暖化には疑う余地がな い」と断定されており、今や地球が温暖化していることは明らかとなっている。近年の温暖 化による気温の上昇は、さまざまな分野にも影響が現れており、 「影響評価」を総合的に考え、 早急に対応していくことが求められている。

影響評価の対象となる分野が様々ある中で、近年、観光産業と気候を関連付けた活発な議 論が展開されている。中でも「スキー産業」は、観光業界においても気候変化に密接な関わ りのある分野である。近年の温暖化による積雪減少は、スキー産業に経済的依存の高い地域 では深刻な問題となっている。一方、温暖化影響評価研究では、地域社会のニーズにあった 気候予測情報を創出することが望まれている。このためには、各地域の地域詳細な気候変化 を捉えると同時に、それらの気象・気候予測結果が各地域や社会に有効に利用される工夫が 必要である。

しかしながら、観光産業に対する地球温暖化の影響評価は極めて限られている。これまで の研究では、積雪簡易モデルを用いた統計的手法を用いて将来の集客数変化による経済影響 被害予測を行っているが、地域詳細な考察はなされていない。個々のスキー場に対する将来 の気候変化や被害の程度は明らかにされておらず、スキー場運営者のニーズに沿った十分な 考察や適応策が望まれている。

本論文では、気象研究所非静力学地域気候モデル(NHRCM05)によりダウンスケーリング された、地域詳細な気候予測データを用いて、スキー運営者のニーズに沿った温暖化影響評 価を行った。対象地域は、早期に積雪量が減少しスキー場運営が危惧されると考えられる、 日本のスキー場南限にほど近い愛媛県で営業しているスキー場全 3 ヶ所とした。 結果、最もスキー運営者の関心が高かった営業可能日数の予測は、人工積雪機に依存する スキー場では約 40%減少、自然雪に依存するスキー場は約 80%減少することが分かった。ま た、小雪対策として自然雪に依存するスキー場が人工積雪機を用いた場合、営業可能日数は 現在より約 40%増加するとの結論を得られた。

キーワード: 地球温暖化 スキー産業 影響評価 地域気候モデル