気象観測・生理測定・心理調査に基づく暑熱環境緩和策の影響評価

  • 小久保 礼子, 2015: 気象観測・生理測定・心理調査に基づく暑熱環境緩和策の影響評価 .

要旨

本研究では,子どもの熱中症リスクを調査するために夏季の東京都渋谷区において屋外気象 観測,生理測定,暑熱環境に関する心理アンケートを行った.さらに他地域の気象状況の知見 を増やすために夏季の岐阜県多治見市で東京都渋谷区と同様の方法で気象観測のみを行った. 東京都渋谷区の実験の被験者は母親(30 歳代~40 歳代前半)とその子ども(6~8 歳)の 8 組であ る.夏季の屋外において被験者の歩行前後の生理測定と,その間の気象観測を行った.気象観 測は身長レベルの気象要素の差を確認するため 50cm と 150cm の高さで行った.さらに被験 者は暑熱環境に関するアンケートを記入した.

得られた気象,生理,心理データから母親と子どもを比較することにより,子どもの熱中症 リスクの調査を行った.熱中症リスクの指標として WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature ) を気象観測データから算出した.身長レベルによる WBGT の違いはほぼ認められなかった. そのため,身長の違いが熱中症リスクの差につながる可能性は低い.本研究の生理測定の結果 で子どもと母親の間に有意に差が認められたのは体重減少率であった.子どもの方が母親より も歩行前後の体重減少率が大きいことから,母親よりも脱水量,つまり発汗が多いことが考え られる.暑熱感覚に関するアンケート結果は商業地では母親の方が,公園では子どもの方が不 快感は高かった.

以上の結果に基づく生理因子と心理因子から考えると,子どもの方が飲水量は高く,不快で あるという自覚があるにもかかわらず母親よりも体重減少率が大きいことがわかった.このこ とから母親よりも子どもの方が脱水による熱中症のリスクは高いと考える.これは屋外におけ る子どもの口渇感,自覚症状によるものであると考えられる.そのため子どもの飲水に対する 自己申告のみでは十分な熱中症対策はできない.大人の適切な監督下における子供の飲水管理 が必要である.

キーワード :子どもの熱中症,生理測定,暑熱環境,人間心理,WBGT