WRF-LESとひまわり8号の雲画像を用いた沿岸都市周辺に広がる小積雲発生の解析

  • 静居 竜大, 2015: WRF-LESとひまわり8号の雲画像を用いた沿岸都市周辺に広がる小積雲発生の解析 .

要旨

都市の上では小積雲が見られる事がある。日本国内の例をあげると、埼玉県の鉄道沿線上 の都市に発生する雲がある。先行研究では、環八雲の発生には東京湾から侵入する海風の収 束が原因であると言われており、鉄道沿線上に発生する雲の発生には、都市と郊外の顕熱フ ラックスの差によって生じる『ヒートアイランド循環』と呼ばれる水平対流と、地表面が加 熱される事によって生じる『サーマル』と呼ばれる鉛直対流が寄与していると言われている。 また、雲の発生が抑制される領域では、海風循環が侵入している事がわかっている。 本論文では 2015 年 7 月に運用開始された、ひまわり 8 号で捉えた関東地方の雲画像デー タと WRF-LES によってシミュレーションした雲を比較した。さらに、雲が発生・抑制して いる領域周辺の流れ場を詳しく考察する事を目的とし、シミュレーションの結果を FFT 解析 する事で、沿岸都市域での流れをサーマルとヒートアイランド循環・海風循環に分離し、沿 岸都市周辺で発生する、流れ場の詳細な解析と雲発生のメカニズムを考察した。沿岸都市周 辺の流れ場と、雲の発生メカニズムについては、次の事が明らかになった。 海風前線近傍では、海風循環とヒートアイランド循環に伴う上昇流と、サーマルによって 雲が形成される。 海風循環が侵入している領域における流れ場は、海風循環が の領域に下降流を生 じさせている事が示された。また、サーマルが発生している事と、サーマルの達する高度が LCL を超えている事が明らかになった。この領域における、雲抑制の原因については、海風 循環の下降流が生じていた雲を下降させ、消滅させる事が原因であると考えられる。 海風循環が侵入していない領域の、都市上空に発生する雲は、ヒートアイランド循環によ る上昇流とサーマルによって発生する。雲の発生が抑制されている領域では、ヒートアイラ ンド循環に伴う下降流が発生しており、この流れが生じていた雲を消滅させると考えられる。 また、海風循環が東京から放射状に伸びる、鉄道沿線上の都市に侵入した時に、雲の発生 が維持されるメカニズムを検証する事を目的とし、沿岸部に T 字型の都市を置いた実験を行 った。なお、この実験の流れ場は、ヒートアイランド循環と海風循環が直交している。その 結果、以下の事がわかった。 海風循環が鉄道沿線上の都市に侵入して、しばらく経過した時刻である 16:00 では、鉄道 沿線上の都市のヒートアイランド循環が発生しているが、サーマルは日中と比較して、弱化 している。したがって、この時間帯の雲は、主にヒートアイランド循環による上昇流で維持 されていると考えられる。さらに時間が経過した日没の時刻は、鉄道沿線上の都市上空の雲 が消える。これはヒートアイランド循環とサーマルの高度が低くなる事が一因であると示唆 された。

キーワード:小積雲 , ひまわり 8 号 , ヒートアイランド循環 , サーマル , 海風循環