都市内構造の違いによる熱環境の不均一性の実態調査

  • 猪狩 浩介, 2014: 都市内構造の違いによる熱環境の不均一性の実態調査 .

都市熱環境は評価するスケールを変えることで異なる特徴を示す。都市内スケールの熱環境の不均一を生み出す因子の一つとしては街区幾何や土地利用が考えられ、特に商業地と住宅街では人工排熱・構造物の違いなどによって明らかな差がある。しかし、一般的に都市内構造の違いによる気温への影響を個々に取り出して調査することは困難であり、特に商業地と住宅地を調査・比較した研究はほとんど見られない。東京都渋谷区は主に商業地・住宅街・大規模緑地からなっており、それぞれの土地利用が隣接している。そこで本研究では、東京都渋谷区を対象に都市内構造が熱環境に及ぼす影響を観測により明らかし、熱環境学における商業地と住宅街の区別の必要性も調査した。観測は2014年8月3日から5日まで、本観測期間中の基準気象データの観測、観測対象地域内の地上や鉛直方向の気温変化や放射冷却強度の調査及び熱画像の撮影を行なった。すると商業地は住宅街より日中では気温が低いが、夜間では気温が高いことが明らかになった。また日中において、建物の表面温度には差は見られないが、道路面温度は住宅街の方が高いことがわかった。これは①商業地にヒートアイランド対策として遮熱性舗装が展開されている箇所が存在すること、②建物の高さの違いによる日陰の時間帯の長さと多さ、③道路幅や建物の占有面積の違いによって起こる風による熱移動の活発度が挙げられる。一方夜間において、商業地と住宅街の道路面温度の差は見られない。しかし、商業地の人工排熱や高い建物の多さによる蓄熱効果の影響で商業地の方が気温は高くなると考えられる。さらに、商業地では接地逆転層が発達せず放射冷却も住宅街より発達しづらいことが明らかになった。これらはヒートスポットや夜間のヒートアイランドの形成に寄与すると考えられる。以上より、商業地と住宅街は熱環境において異なる特徴を持つため、都市熱環境を評価する際は区別されるべきであると考えられる。

キーワード: 都市熱環境、街区幾何、土地利用、観測