都市気候(都市気象,ヒートアイランド,ゲリラ豪雨)

はじめに

 社会の発展に伴い、都市では特有の気候(都市気候)が形成されます。日下研究室では、「将来の都市気候予測」「都市で発生する集中豪雨」「ヒートアイランド観測」「公園の緑地効果」というテーマで、都市気候の研究を進めています。

 

 次の論文はBoundary-Layer Meteorology(Springer)に掲載された全ての論文の中で、2013-2014年の期間で最も多く読まれました。

Kusaka, H., H. Kondo, Y. Kikegawa, and F. Kimura, 2001: A simple single-layer urban canopy model for atmospheric models : Comparison with multi-layer and slab models. Bound. -Layer Meteor., 101, 329-358.

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将来の都市気候予測    

 都市化と地球温暖化という2つの温暖化プロセスにより、将来の日本の都市域では急速な気温上昇が危惧されています。このため、都市を対象とした時空間的に詳細な気候予測が強く望まれています。
これまでの気候予測は、全球気候モデル(GCM)が主役を担ってきました。しかしながら、一般的なGCM水平解像度は約100km程度と粗く、複雑な日本の都市構造を表現するには適していません。
 そこで日下研究室では、力学ダウンスケールという手法を用いて時空間的に詳細なレベルの都市気候予測を行っています。力学ダウンスケールではGCMと領域気候モデルWRFを組み合わせ、スーパーコンピュータを用いてシミュレーションを行っています。

予測対象は2050年代から2100年まで幅広く、また解析の対象も気温のみならず降水にも着目しています。加えて複数の都市化シナリオを用いることにより、都市計画が将来の都市気候に与える影響も調査しています。

(文責:鈴木パーカー明日香)

数値モデルで計算した2000年代8月の平均気温(左)、2050年代8月の平均気温(右)2050年代になると、平均的な夏でも現在の猛暑の夏と同じくらい暑くなることがわかりました。2070年代になると、毎日寝苦しい夜となることもわかりました。

藤田惠子 (2011, 卒業論文) より
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学術論文など
  • Doan, Q. V., and H. Kusaka, 2016: Numerical study on regional climate change due to the rapid urbanization of greater Ho Chi Minh City's metropolitan area over the past 20 years. International Journal of Climatology, 36(10),3633–3650.
    (日付:2016/08/01) (DOI: 10.1002/joc.4582) (謝辞: CCS学際共同利用) Full Text Download
  • Doan, Q. V., H. Kusaka and Q.B. Ho, 2016: Impact of future urbanization on temperature and thermal comfort index in a developing tropical city: Ho Chi Minh City. Urban Climate, 17, 20-31.
    (日付:2016/06/08) (DOI: :10.1016/j.uclim.2016.04.003) (謝辞: CCS学際共同利用) Full Text Download
  • Kusaka, H., A. Suzuki-Parker, T. Aoyagi, S. A. Adachi, Y. Yamagata, 2016: Assessment of RCM and urban scenarios uncertainties in the climate projections for August in the 2050s in Tokyo. Climatic Change., 137 (3),427-438.
    (日付:2016/05/23) (DOI 10.1007/s10584-016-1693-2) (謝辞: S-5-3, RECCA, 創生, CCS学際共同利用) Full Text Download
  • 髙根雄也, 日下博幸, 原政之, 2012: IPCC SRES A2シナリオ下での三大都市圏の夏季気候の将来予測: WRF-UCMによる力学的ダウンスケーリング. 日本ヒートアイランド学会論文集, 7, 18-26.
    (日付:2012/11/29) (謝辞:RECCA,S-8,T2K) Full Text Download
  • Kusaka, H., M. Hara, and Y. Takane, 2012: Urban climate projection by the WRF model at 3-km horizontal grid increment: Dynamical downscaling and predicting heat stress in the 2070’s August for Tokyo, Osaka, and Nagoya metropolises. J. Meteor. Soc. Japan., 90B, 47-63.
    (日付:2012/06/09) ( DOI: 10.2151/jmsj.2012-B04) (謝辞:S5, CCS学際共同利用(T2K)) Full Text Download
TV取材・新聞掲載など
    • 日経新聞 研究成果掲載(2012年5月10日)
    • 茨城新聞 研究成果掲載(2012年6月29日)
    • 中日新聞 研究成果掲載(2012年6月29日)


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都市の集中豪雨       

 都市はその構造上、豪雨に対して脆弱であるため、都市で発生する短時間強雨の実態調査・要因解明・予測が強く望まれています。都市の存在によって豪雨が発生するという説が定説のように広まっていますが、これに対して疑問を投げかけている研究者も多く、実際のところはまだよくわかっていません。日下研究室では、「都市があるから豪雨が発生するのか?」という問題の答えを出すべく、観測データの統計解析、領域気象モデルを用いた数値実験など、複数のアプローチでこの問題に取り組んでいます。

(文責:古橋奈々)

15年間の短時間強雨発生日の総降水量山岳域や東京23区西部で降水量が多いことが分かりました。
水成真由美 (2010, 卒業論文) より →詳しくはこちら
 
学術論文など
  • Kusaka, H., K. Nawata, A. Suzuki-Parker, Y. Takane, and N. Furuhashi, 2014: Mechanism of precipitation increase with urbanization in Tokyo as revealed by ensemble climate simulations. J. Appl. Meteor. Clim., 53, 824-839.
    (日付:2014/04/01) (DOI: http://dx.doi.org/10.1175/JAMC-D-13-065.1) (謝辞:創生, RECCA, CCS学際共同利用(T2K)) Full Text Download
  • 仲野久美子, 仲吉信人, Alvin C.G. Varquez, 神田 学, 足立幸穂, 日下博幸, 2013: 最新の都市パラメタリゼーションを導入した集中豪雨シミュレーション. 土木学会論文集B1(水工学), 69(4), I_335-I_360.
    (日付:2013/02/01) Full Text Download
  • 日下博幸, 羽入拓朗, 縄田恵子, 2010: GPS可降水量に着目した局地豪雨の事例解析 - 2000年7月4日に東京で観測された事例. 地理学評論, 83(5), 479-492.
    (日付:2010/09/01) (謝辞:S5) Full Text Download
TV取材・新聞掲載など
  • テレビ朝日「報道ステーション」日下先生出演(2012年5月10日)
  • テレビ朝日「モーニングバード」研究成果紹介(2011年7月28日)
  • 読売テレビ「ミヤネ屋」研究成果紹介(2011年8月2日)
  • 日経新聞 研究成果掲載(2011年7月17日)

ヒートアイランド観測・シミュレーション     

 近年、都市化に伴う環境の変化により、都市部のヒートアイランド現象が深刻化しています。それにより、熱中症などによる被害が増加しています。そのため、都市の高温現象への対策を急速に講じることが求められています。日下研究室では、ヒートアイランド現象の実態を把握するため観測を行っております。これまで、茨城県つくば市や岐阜県多治見市において、ヒートアイランド観測を行ってきました。今後も継続して観測を行っていく予定です。

(文責:阿部紫織)

つくば市周辺の公園等で観測された地上気温分布

2008年2月17日6時00分のデータより.天王台のデータには筑波大学陸域環境研究センターの観測値,長峰のデータには館野高層気象台の観測値を用いた.桜色の地域はつくば市内の観測地区.鶯色の地域はそれ以外のつくば市を示す.

つくば市中心部(竹園,東新井,二の宮)の気温がもっとも高く郊外と比べると5℃近い気温差がある.次に気温が高い地区は住宅街(吾妻,並木)となっており,南北に伸びたヒートアイランドが形成されている.

日下ほか (2009, 日本ヒートアイランド学会論文集) より
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学術論文など
  • Lin, C., C. Su, H. Kusaka, Y. Akimoto, Y. Sheng, J. Huang, and H. Hsu 2016: Impact of an improved WRF urban canopy model on diurnal air temperature simulation over northern Taiwan. Atmospheric Chemistry and Physics, 16, 1809–1822.
    (日付:2016/02/16) (DOI: :10.5194/acp-16-1809-2016) Full Text Download
  • Adachi, S. A., F. Kimura, H. Kusaka, M. Duda, T. Yamagata, S, Seya, K. Nakamichi, T. Aoyagi, 2014: Moderation of summertime heat-island phenomena via modification of the urban form in the Tokyo metropolitan area. J. Appl. Meteor. Clim., 53, 1886-1900.
    (日付:2014/08/08) Full Text Download
  • 岡田牧, 日下博幸, 高木美彩, 阿部紫織, 髙根雄也, 冨士友紀乃, 永井徹, 2014: 夏季における岐阜県多治見市の気温分布調査. 天気, 61(1), 23-29.
    (日付:2014/01/31) (謝辞:RECCA) Full Text Download
  • 髙根雄也, 日下博幸, 髙木美彩, 岡田牧, 阿部紫織, 永井徹, 冨士友紀乃, 飯塚悟, 2013: 岐阜県多治見市における夏季晴天日の暑熱環境の実態調査と領域気象モデルWRFを用いた予測実験 ー物理モデルと水平解像度に伴う不確実性の検討ー. 地理学評論, 86-1, 14-37.
    (日付:2013/01/01) (謝辞:RECCA, CCS学際共同利用(T2K)) Full Text Download
  • 日下博幸, 高根雄也, 阿部 紫織, 高木 美彩, 重田 祥範, 大橋 唯太, 布和 宝音, 2012: オープンスペースで実施した定点観測によって捉えられた夏季晴天日におけるつくば市のヒートアイランド:都市内外の気温差に関する不確実性の評価. 日本ヒートアイランド学会論文集, 7, 1-9.
    (日付:2012/07/27) (謝辞:科研費 若手研究B, 科研費 基盤研究B, RECCA) Full Text Download
  • Kusaka, H., F. Chen, M. Tewari, J. Dudhia, D. O. Gill, M. G. Duda, W. Wang, and Y. Miya, 2012: Numerical Simulation of Urban Heat Island Effect by the WRF Model with 4-km Grid Increment: An Inter-Comparison Study between the Urban Canopy Model and Slab Model. J. Meteor. Soc. Japan., 90B, 33-45.
    (日付:2012/06/09) (謝辞:S5, CCS学際共同利用(T2K)) Full Text Download
  • 日下博幸, 大庭雅道, 鈴木智恵子, 林陽生, 水谷千亜紀, 2009: 冬季晴天日におけるつくば市のヒートアイランド - 予備観測の結果 - . 日本ヒートアイランド学会論文集, 4, 10-14.
    (日付:2009/02/10) (謝辞:科研費 若手研究B) Full Text Download
  • Kusaka, H., F. Kimura, 2004: Thermal effects of urban canyon structure on the nocturnal heat island. J. Appl. Meteor. Clim., 43, 1899-1910.
    (日付:2004/12/01) Full Text Download
  • Kusaka, H., F. Kimura, 2004: Coupling a single-layer urban canopy model with a simple atmospheric model : Impact on urban heat island simulation for an idealized case. J. Meteor. Soc. Japan, 82, 67-80.
    (日付:2004/02/25) Full Text Download
  • Kusaka, H., F. Kimura, H. Hirakuchi, and M. Mizutori, 2000: The effects of land-use alteration on the sea breeze and daytime heat island in the Tokyo metropolitan area. J. Meteor. Soc. Japan, 78, 405-420.
    (日付:2000/08/25) Full Text Download
TV取材・新聞掲載など
  • TBS「Nスタ」日下先生出演(2010年7月22日))

 

公園の緑地

 人工被覆面が多い都市街区内は一般的に気温が高く、人の健康にも悪影響(熱中症など)を及ぼす熱環境にあります。この様な熱環境を緩和させるために都市内の緑地に注目が集まっています。

 一般的に、緑地内の気温が周囲街区の気温よりも低いことは、過去の多くの研究で観測・リモートセンシング・数値モデルによって明らかにされてきました(緑地のクールアイランド現象)。しかしながら、単に緑地といってもその広さ・植生形態は多種多様です。本当に緑地内は周囲街区と比べて涼しいのか?涼しいとして人の体感的にも涼しいといえるのか?また緑地の違いによって緑地の効果に違いがどの程度あるのか? また、緑地は周囲街区の気温を緩和させる効果もあると考えられています。これらのテーマについて、日下研究室では観測と数値シミュレーションの両方視点で解析を行っています。

(文責:岡田牧)

図B:東京の代々木公園・明治神宮周囲の市街地構造(出典:2008/09年度Zmap-TOWNIIデジタル住宅地図)
代々木公園内の気温は周囲市街地よりも2~3℃程度低く、緑地内が周囲市街地よりも低温である様子が分かる(図A)。B~Gは観測エリアを表しており図Bにも対応している。市街地の幾何構造は都市の熱環境に影響を及ぼすと考えられており、気温の高い場所と高い建物が密集している場所はよく一致している。

岡田ほか (2013, 日本ヒートアイランド学会論文集) より
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図A:気温の移動観測より得られた東京の代々木公園・明治神宮の内外の気温分布(2012年12月1日05:00-7:00に観測)
 
学術論文など
  • Okada, M., M. Okada, and H. Kusaka, 2016: Dependence of Atmospheric Cooling by Vegetation on Canopy Surface Area During Radiative Cooling at Night: Physical Model Evaluation Using a Polyethylene Chamber. Journal of Agricultural Meteorology, 72(1), 1-9.
    (日付:2016/03/10) (DOI: 10.2480/agrmet.D-15-00015) (謝辞: RECCA) Full Text Download
  • Okada, M., M. Okada, and H. Kusaka, 2014: A Polyethylene Chamber for Use in Physical Modelling of the Heat Exchange on Surfaces Exposed to a Radiation Regime. Boundary-Layer Meteorology, 153(2), 305-325.
    (日付:2014/06/12) (謝辞: RECCA) Full Text Download
  • Okada, M., H. Kusaka, 2013: Proposal of a new equation to estimate globe temperature in an urban park environment. J. Agric. Meteol., 69(1), 23-32.
    (日付:2013/09/01) (謝辞:RECCA, S-8) Full Text Download
  • 岡田牧, 若月泰孝,犬飼俊, 廣田陸, 日下博幸, 2013: 初冬早朝における緑地内外の気温分布調査 -代々木公園・明治神宮の事例-. 日本ヒートアイランド学会論文集, 8, 7-12.
    (日付:2013/04/16) (謝辞:テニュアトラック普及・定着事業(若月泰孝), S-8) Full Text Download

 

晴天積雲

 「晴天積雲」は下層雲の一種で、日射による地表面加熱に伴って発生する鉛直対流(熱対流)や水平対流による上昇流によって発生する積雲です。土地被覆に差異がある地域(都市と郊外、裸地と森林、非灌漑地域と灌漑地域など)においては、下層雲の発生分布に偏りが見られることが知られています。例えば、都市と郊外では、都市で下層雲の発生が多く、郊外で少ないことが明らかになっています。

 都市と郊外が存在する場合、日中に、都市ヒートアイランド循環とサーマルがともに発生し、晴天積雲の発生に影響を及ぼします。しかしながら、都市での晴天積雲の集中的な発生や郊外での晴天積雲の発生の抑制に対する、都市ヒートアイランド循環とサーマルの効果に関しては、まだまだ理解されていない部分が残されています。

 日下研究室では、LESによる高解像度の数値シミュレーションによってサーマルを陽に表現することにより、都市での晴天積雲の集中的な発生や郊外での晴天積雲の発生の抑制に対する、都市ヒートアイランド循環とサーマルの効果を調査しています。

(文責:久野)