降水・雲(地形性降水,都市降水,晴天積雲,霧)

地形性降水(局地豪雨、豪雪)

 日本ではしばしば、豪雨が洪水や都市機能の麻痺を引き起こします。とくに夏の午後には、不安定な大気の下で積乱雲が成長し、局地的な対流性降水が多く発生します。

 海外では古くから、対流性降水が海風や谷風などの影響を受けて日変化すると指摘されてきました。日本もその例外ではありませんが、海外よりも複雑な地形や土地被覆をしており、降水発生のメカニズムも複雑となっています。また、雨は非線形性が強く、「たまたま」起こることが多い現象です。したがって、一つの降水事例について解析や数値シミュレーションを行うだけでは、実際の降水メカニズムを十分に解釈することは困難です。

 日下研究室では、統計解析やWRFモデルによる数値シミュレーションなど複数のアプローチから、局地的な大雨の発生要因について研究しています。とくに数値シミュレーションを行う際に、気候実験やモデルアンサンブルといったテクニックを用いることで、非線形性の強い降水の発生要因を正しく理解しようと試みています。

(文責:工藤)

近畿地方の夏季に発生する強雨

 山・海が近接する近畿地方で発生する強雨の発生要因について、統計解析・数値シミュレーションによって調べました。静穏な日には、昼は谷風の影響により山岳部で、夕方は海風の収束効果も加わって陸地の形状に沿うように強雨が発生することを明らかにしました。

WRF理想化実験の結果 12-15時の3時間積算降水量
【左】 コントロール実験
【中央】 地形を除去した実験
【右】 海を陸地に変更した実験

近畿地方を対象に、夏季の静穏な日を想定して理想化実験を行った。山と海が近接する近畿地方では、日中海風と谷風が複合して積雲が発達する特徴があり、昼頃に山岳域で降水が発生している(左図)。感度実験の結果、昼の降水発生には、海風より先に発達する谷風の収束が支配的であることが分かった(中央・右図)。

学術論文など
  • 久野 勇太, 日下 博幸, 2014: 濃尾平野周辺における夏季強雨の気候学的特性, 天気, 61, 661-667. 2014/08/31 .
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  • 日下博幸, 羽入拓朗, 縄田恵子, 2010: GPS可降水量に着目した局地豪雨の事例解析 - 2000年7月4日に東京で観測された事例, 地理学評論, 83(5), 479-492. 2010/09/01 .
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都市降水

→ 都市気候のページをご覧ください。

晴天積雲

 「晴天積雲」は下層雲の一種で、日射による地表面加熱に伴って発生する鉛直対流(熱対流)や水平対流による上昇流によって発生する積雲です。土地被覆に差異がある地域(都市と郊外、裸地と森林、非灌漑地域と灌漑地域など)においては、下層雲の発生分布に偏りが見られることが知られています。例えば、都市と郊外では、都市で下層雲の発生が多く、郊外で少ないことが明らかになっています。

 都市と郊外が存在する場合、日中に、都市ヒートアイランド循環とサーマルがともに発生し、晴天積雲の発生に影響を及ぼします。しかしながら、都市での晴天積雲の集中的な発生や郊外での晴天積雲の発生の抑制に対する、都市ヒートアイランド循環とサーマルの効果に関しては、まだまだ理解されていない部分が残されています。

 日下研究室では、LESによる高解像度の数値シミュレーションによってサーマルを陽に表現することにより、都市での晴天積雲の集中的な発生や郊外での晴天積雲の発生の抑制に対する、都市ヒートアイランド循環とサーマルの効果を調査しています。

(文責:久野)

 日本周辺は、世界で最も霧が発生しやすい地域の一つです。特に、盆地霧や太平洋沿岸地域の海霧がよく知られています。霧は、交通障害を引き起こすなど私たちを困らせる存在でもありますが、一方で、その幻想的な風景は多くの観光客を魅了し、地域の活性化にもつながります。このように、霧は私たちにとってとても身近な存在です。しかしながら、霧についてはまだまだ理解されていない部分が多々残されています。さらに、霧の発生予測は非常に難しいです。そこで、少しでも霧への理解が進み、予報精度が向上するように、霧の研究を行っています。

 日下研究室では、これまで、霧の発生が多い地域(会津盆地、茨城空港、箱根)を対象に霧の実態調査を行ってきました。さらに、最近では霧を再現する数値モデルの開発も行っています。

(1) 会津盆地の霧
会津盆地では、どんな時に霧が発生しやすいのかを統計的に調査しました。
その結果を利用することで、会津盆地の霧の予報精度を向上させることに成功しました。

(2) 茨城空港の霧
関東平野にたくさんあるライブカメラの映像から、茨城空港で発生した霧の空間分布を調べ、どのようなタイプの霧が多いのかを調べました。
その結果、海上で発生した霧が流れ込んでくるケースと茨城空港で局所的に霧が発生するケースの2種類が多いことがわかりました。

(3) 箱根の霧
観光地である箱根には、狭い範囲にたくさんのライブカメラが設置してあります。
そのライブカメラを用いて、箱根で発生した霧の実態調査を行いました。
その結果、近接するエリアでも、標高や周囲の地形により、霧発生状況が異なっていることが明らかになりました。

(4) 霧モデルの開発
本研究室で開発中のLESモデルに、大気放射モデル、詳細な雲物理モデルなどを導入し、放射霧の数値シミュレーションに挑戦しています。

今後は、ライブカメラ解析や数値実験から、霧の形成メカニズムについて調査していきます。

(文責:秋本)

ライブカメラが捉えた芦ノ湖の霧
ライブカメラの映像(左), 晴天時(中央), 霧発生時(右)

出典:箱根ウェブカメラ|箱根全山(http://www.hakone.or.jp/web-camera/)
学術論文など
  • Akimoto, Y., H, Kusaka., 2015: A climatological study of fog in Japan based on the event data, Atmospheric Research., Atmos. Res., 151, 200-211. 2015/01/01(謝辞: 創生,RECCA) .
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