ヒートアイランド現象を再現するための都市気象モデルの開発

  • 池田 亮作, 2007: ヒートアイランド現象を再現するための都市気象モデルの開発 .

 都市のヒートアイランド現象のメカニズムを解明するため、数値モデルを用いた研究が精力的に行われている。都市構造の効果を物理的に表現したモデルとして都市キャノピーモデルがあり、都市の熱環境を精度よく計算することができる。本研究では、ヒートアイランドを再現する数値モデルを開発するために、大気モデルと都市キャノピーモデルを構築する。またそれらを結合し、ヒートアイランドやヒートアイランド循環に対する建物の影響を評価する。
 まず、鉛直1次元モデルと2次元大気モデルを構築した。2次元モデルは非静力ブジネスク近似方程式系を基礎方程式とし、乱流モデルはMellor-Yamada level 2を用いた。地表面温度の予報は強制復元法を採用した。検証では、それぞれ既存研究と同一条件で計算を行い、比較を行った。1次元モデルは、温位と風速の鉛直プロファイルで検証を行い、2次元モデルは海陸風の数値実験で検証を行った。その結果、おおよそ既存研究のモデルと一致していることを確認した。
 次に、都市キャノピーモデルを構築するにあたって近藤・劉(1998)の多層都市キャノピーモデルを簡略化した。計算結果より、道路面・屋上・壁面温度の表面温度と風速 の鉛直プロファイルについては、特徴的な日変化が再現できていることを確認した。 また、これらは近藤・劉(1998)のモデルの計算結果とも類似するものであった。これより、本研究で簡略化したモデルでも都市キャノピーを表現するパフォーマンスがあることが確認できた。
 最後に2次元大気モデルと都市キャノピーモデルを結合した2次元都市気象モデルを用いて、都市の建物がヒートアイランドやヒートアイランド循環に対して、どのような影響を与えるか評価する数値実験を行った。その結果、日中のヒートアイランド循環は、建物がある場合の方が無い場合よりも弱い事が示された。これは、建物が存在する事による都市キャノピー層内の風速低減効果により、顕熱フラックス量が建物の無いときよりも減少したからであると示唆される。日中(13 時)のヒートアイランド強度は建物が無い方が、ある方よりも約 1°C強かった。また、夜間(21 時)は建物が無い方は放射冷却が強く効き、ヒートアイランド強度が 0.4°Cと弱かったが、建物がある方ではヒートアイランド強度は約 3°Cであり、昼間(13 時)よりも 夜間(21 時)のヒートアイランド強度が強い事が示された。夜間は、建物があることによる大きな熱容量と低い天空率が夜間の放射冷却を緩和している事が、数値実験で示された。


卒論を基にした以下の論文がJ. Appl. Meteor. Clim. に掲載されました(2010)。
Ikeda, R., Kusaka, H., 2010: Proposing the simplification of the multilayer urban canopy model: Intercomparison study of four models. J. Appl. Meteor. Clim., 49, 902-919. 2010年05月01日 (謝辞:S5) .
American Meteorological Society(AMS)のページ

国際都市気候学会(ICUC-7)にて英語口頭発表しました(2009)。