首都圏における夏季の豪雨の実態と降水に対する都市化の影響

  • 羽入 拓朗, 2007: 首都圏における夏季の豪雨の実態と降水に対する都市化の影響 .

 本論文では、首都圏で豪雨が発生した日の気象場の特徴を明らかにし、降水対する都市の影響を評価した。まず、レーダー・アメダス解析雨量のデータが取得できる全ての期間である、1988 年 ~2005 年までの 7,8 月の総降水量の分布図を作成した。その結果、郊外より都市域で降水量が多いことが分かった。
 次に、都市域で発生した3つの事例に対して、地上風系や大気の安定度をはじめ、水蒸気場や雲頂高度にも着目した詳細なデータ解析を行った。その結果、以下のような共通した特徴が見られた。(1) 日本列島は太平洋高気圧に覆われるものの、上空には寒気を伴ったトラフが存在し、雷雨の起こりやすい状態にあった。(2) 降雨開始前、都心部での気温がそのほかの地域に比べて高く、降水が開始するまで都心部で地上風が収束していた。(3) 全体的に降水開始の数時間前に増加している傾向 が見られたが、都心部での明瞭な増加は見られなかった。(4) 一旦低くなった雲頂高度が都心部で再上昇しており、都市で雲が再発達した。
 日本列島が太平洋高気圧に覆われた事例での地上風系や大気の安定度を解析した結果、地上風は都市部で収束する傾向が見られ、降雨日の大気の安定度は小さかった。
 さらに、2000 年 7 月の 1ヶ月間についてWRFを用いた数値実験として、再現計算と都市を除去した実験を行い、降水に対する都市化の影響を評価した。感度実験の結果 は、僅かながら都市ありと都市なしの間に差が生じ、特に都心部で都市ありのほうが降水量が多くなる傾向を示した。さらには、2000 年 7 月 4 日の事例について も同様の実験を行った。この際、降水のカオス性を考慮するため、初期値や物理 モデルを変えたアンサンブル実験も行った。その結果、都市ありのほうが都心部で降水量を多く予測するメンバーが、全 22 個中 15 個見られた。しかしながら、アンサンブル平均値に明瞭な影響は見られず、メンバー間のばらつきも大きかった。 また、都市の有無によるインパクトよりも、初期値や物理モデルの違いによるインパクトのほうが大きいという結果も得られた。以上の結果から、モデルの中で降水に対して都市の効果は確かにあり、都市の存在が降水量を増加させる可能性が示された。しかしながら、その影響は山岳等 の影響に比べ、小さいことが明らかになった。


卒論の一部分を基にした以下の論文が地理学評論に掲載されました(2010)。 
日下博幸, 羽入拓朗, 縄田恵子, 2010: GPS可降水量に着目した局地豪雨の事例解析 - 2000年7月4日に東京で観測された事例. 地理学評論, 83(5), 479-492. 2010年09月01日 (謝辞:S5) .
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卒論の一部分を基にした以下の論文が日本ヒートアイランド学会誌に掲載されました(2010)。
日下博幸, 羽入拓朗, 縄田恵子, 古橋奈々, 横山仁, 2010: 東京で観測された局地豪雨の実態調査:2002年8月2日および2004年8月10日の事例の比較解析. 日本ヒートアイランド学会論文集, 5, 1-10. 2010年04月01日 (謝辞:S5) .
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