寒冷前線通過時に見られる降水帯の形成メカニズムの解明

  • 北畑 明華, 2007: 寒冷前線通過時に見られる降水帯の形成メカニズムの解明 .

 日本海低気圧に伴う寒冷前線は、本州を通過する際地形の影響を受ける。そのため、東海地方や関東地方では風、気温、降水が複雑に変化する。本研究では、以下に挙げる前線通過時の降水パターンに着目して36の事例を分類し、それぞれの場合における 気象場を把握し、降水帯の形成メカニズムを解明した。 (i) 一般型:降水バンドが寒冷前線とともに動き、全国的に降水をもたらす (ii) 北陸型:北陸地方のみに降水をもたらす (iii) ジャンプ型:中部山岳西側で降水をもたらし、関東地方では降らない。その後、太平洋に寒冷前線が抜けると、再び降水帯が発達する。 (iv) 東海タイプ:東海地方に寒冷前線が到達する前にこの地域に降水をもたらす まず、北陸タイプの解析を行った。2000年から2006年の事例を集め、気圧場・気温場の変化について統計解析を行った結果、北陸タイプは冬季によく出現するが、500hPa高度でのトラフは比較的浅い特徴が見られた。加えて、典型ケースでの大気状態を解析した結果、600hPa高度以上では比較的寒気の層が薄く、上層は安定成層を成していることが分かった。これらより、北陸タイプでは擾乱及び前線はそれほど活発ではなく、降水バンドは山を越えることができない。さらに、さらに、WRF モデルを用いた再現実験によって降水の再現性を確認した後、中部山岳を除去した実験を行った。北陸型の場合には、山岳をなくすことで降水帯が早く衰退した。水蒸気も少なく、地形による強 制上昇の効果がなくなったためと考えられる。 次に、ジャンプ型についても同様の解析を行った。その結果、山岳をなくすと関東にも降水がもたらされた。これは、ジャンプ型に対しても山岳が大きな役割を果たすことを示している。再現実験で計算された可降水量と地上風系を確認 したところ、山岳によって関東内陸部への水蒸気の流入が遮られていることがわかった。また、前線が山岳を越える頃、伊勢湾から抜けた強風が湿った南西風と東海上で強い収束線を作る。以上のようにして、関東で降らず、東海上で再び降水をもたらすことが分かった。


卒論の一部分を基にした以下の論文がSOLAに掲載されました(2009)。
Kusaka, H., Kitahata, H., 2009: Synoptic-scale climatology of cold frontal precipitation systems during the passage over central Japan. SOLA, 5, 61-64. 2009年05月01日 .
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